DREPがスタートしたのと同時に受講を開始されたニセコ町役場。受講導入にご尽力いただき、その後も受講状況等の管理をご担当いただいた大内氏にお話をお聞きしました。

(2025年6月16日 ニセコ町役場にて)

北海道ニセコ町

総務課情報管理室 兼 財産管理係 係長

大内 俊輔 氏

人材育成とDX推進の現場から

ニセコ町役場・大内氏が語る、現状抱える課題

社会人としてのキャリアを積み重ねたあと、某大学の財務系業務を経験、そして北海道大学へ転籍し、増収・経費削減やDX関連の取り組みに携わった大内氏は、自らコーディングや情報セキュリティを学び、現在のニセコ町役場では業務改善、組織改革、情報管理など多岐にわたる改革を推進されています。
「地方自治体の現場でも、人口減少や業務の複雑化、そしてデジタル化の波が押し寄せています。限られた人的リソース中で、組織の基盤をどう強化するかは大きな課題です。組織は“人”で成り立っており、最大の課題は人材育成です。」

組織の課題は「人」

自ら考えて行動する職員を育てるために

若手職員のOJTや業務KPIの設定に取り組む一方で、専門知識を持った人材離れは、依然として大きな課題です。
「役場内の既存の仕組みを理解し、それを運用する中で見えてくる課題もあります。また、コンピテンシーの導入やこの研修などから、組織の活気や職員のやる気を取り戻すことが必要であると考えます。上司の指示を待つだけであったり、思考することなく前例踏襲するのではなく、各自が業務上の課題を自ら見つけ、考え、行動できるように変えていかなければならない。」

研修導入がもたらす変化

DREPとデジタルリテラシー向上への挑戦

「情報管理を担当する立場から、DREPを受講することにより心構えが変わり、そこから波及して探求心を持って自分の仕事に活かせるような、考えて仕事をする職員を増やしていきたいと思い、この研修を導入しました。受講者は約50名、その内の7割が正職員で、受講に対する反応は、『コンテンツのレベルが高い』『業務との結び付きが見えにくい』という声もありましたが、同時に自分のスキル不足に危機感を覚える若手もいました。」
DREPを世の中に広めていくことについては、「受けた人数が多ければ多いほど、同レベルのリテラシーを有する人々が増えていくので、受講者数を増やすべきと思います。ただし、現状のニセコ町役場職員のデジタルリテラシーでは、DREPのレベルが高いと感じたため、「Stage1-1」を必修、その先は任意にしたところ、『Stage1-1でも内容が難しい』ということで、「Stage1-2」以降に進む職員が少ない状況です。今後、デジタルの基礎を学べるデジタルベーシックコースが新設されるということなので、研修をより受けやすくなるかと思います。」

組織を次のステージへ

全員が同じデジタルリテラシーを持つために

「役場に限らず財務分析など多くのデータを視覚的に表現する際に、BIツールは有用なものであり、ChatGPTを初めとしたAIの活用も使えて当たり前の時代がやってきているため、できる限りすべての職員に「Stage2」以降も積極的に受講して欲しいと考えています。多くの職員が、同じレベルのデジタルリテラシーがあれば、仕事がより円滑に進むので、まずは職員のレベルを引き上げていきたいです。」

 

続いて、実際にDREPを受講いただいた笹森氏、金子氏、菅原氏の3名からお話をお聞きしました。

現場が抱える課題

ニセコ町役場 若手職員が語るデジタル化への挑戦

少子高齢化や国際化が進む中、地方自治体の業務は多様化し、同時に効率化が求められています。ニセコ町役場でもその課題は例外ではありません。情報管理から財政、都市建設まで、それぞれの現場で見える「次に進むための課題」とは何でしょうか。

デジタル化の進捗と人材不足

総務課情報管理室・笹森翔一氏の視点

山形大学卒業後、北海道大学大学院で環境科学院を修了し、ニセコ町役場に入庁した笹森氏。学校関係の業務を経て、現在は情報管理者として役場全体のシステム面を支えています。
「申請書類のデジタル化はまだ道半ばです。さらに少ない人数で多くの事業を進めなければならず、新しいツールの導入やAIの活用も必要ですが、マンパワーも費用も不足しています。下手に進めると負担が増えてしまうことが悩ましいところです。」
効率化の必要性を感じながらも、その実装には人材と予算の壁が立ちはだかっていると笹森氏は語ります。

利便性の向上とシステム化の必要性

都市建設課土木管理係・金子雷雅氏の視点

令和5年度に入庁し、町民生活課でゴミ処理の担当を経て都市建設課に異動した金子氏は、外国人住民が増える町ならではの課題を語ります。
「役場内の支払いは現金のみで、特に外国人の方にとって不便です。電子マネーやカード決済があれば、もっとスムーズに手続きが進むはずです。」
さらに現在の都市建設課では、「冬季の除雪業務で、業者から送られる大量の日報データを手入力しています。役場と民間双方の負担軽減のためのシステム構築ができればと思いますが、そのための経費負担が大きい点も課題です」。

財政データの可視化に向けて

総務課財政係・菅原正人氏の視点

令和4年度に入庁後、税務課を経て財政係に所属する菅原氏は、急増する財政データの整理と分析に取り組んでいます。
「予算規模が大きくなり、地方債の償還計画などを作成する必要があります。しかし、従来の複雑化したエクセルでは可視化が難しく、早急にBIツールを導入し、見やすいグラフや分析資料を作るべきと感じています。」

「DREP」を受講してみて

情報リテラシーやAI活用の基礎を学べるDREPを受講して、「難しい内容もありましたが、業務に活かせると思いました。受講時間も上司と相談しながらできたので、業務に支障がでることもありませんでした。」(金子氏)
「ネットリテラシーや情報システム利用時の注意点を再確認できたのは大きいです。AI活用の部分は特に有益で、インフラ整備の確認など多様な応用ができると感じました。」(笹森氏)
「基礎的な知識を得られたことで、今後の業務効率化にもつながると思います。ニセコ町でもStage2までを必修にしてもいいのでは。」(菅原氏)との感想をいただきました。